2017年2月9日木曜日

「雨過晴天」の青さとは

 
  どう表現したらこの青の美しさを伝えられるだろうかと思い悩んでいるのだが、
そもそも青磁の器だから「青」という言葉で表現することさえ躊躇している。
 今回東洋陶磁美術館で公開されている台北・故宮博物院の至宝と云われる「青磁無紋水仙盆」の美しさの事である。
 故宮博物院といえば、清の第6代皇帝、乾隆帝を中心に歴代皇帝が収集した膨大な文物を収蔵した中国文化の殿堂と云われている。
 特に有名なのが翡翠を彫刻した「翠玉白菜」と瑪瑙を彫刻した「肉形石」(豚の角煮)だ。2014年には東京国立博物館で催され大勢の観客が詰めかけた。

 私は2009年に初めての海外旅行で台湾に行った。目的は故宮博物院だった。手慣れたガイドさんのお蔭で両方とも間近に見ることが出来たがその二つよりも私を強く引き付けたのが「青磁水仙盆」だった。
 この青磁水仙盆を生み出したのは中国・河南省の清凉寺跡で窯跡が見つかった「汝窯」の青磁である。汝窯と青磁を語るには膨大なページが必要らしいので今回は置いておく。

 このたびの故宮博物院の至宝《青磁水仙盆》の海外初公開、しかも大阪の東洋陶磁美術館にやって来た事については東洋陶磁美術館の長年の研究と故宮博物院との交流のお蔭でもある。また、東洋陶磁美術館には、今回やって来た「青磁水仙盆」達の兄弟ともいえる「青磁水仙盆」がある事も無関係ではないと思える。現存する北宋時代の青磁水仙盆5点(故宮4点東洋1点)と清時代に作られた「倣汝窯水仙盆」1点の6点が一堂に公開されたのである。

 さて話は最初の「青磁水仙盆」の青磁の「青さ」についてである。東洋陶磁美術館は陶磁器の本来の色合いを観賞することが出来るように、展示ケースの天井を自然採光するようにした展示室もあるが今回は故宮の至宝でもあり、かなり気を遣ってそこでの展示ではなかったようだ。
 館内で上映されているビデオではこの青磁の「青さ」は「雨過晴天」と称し、「雨の過ぎ去った後、雲間から見える青空、そのような器を手にしたい」との時の皇帝の切なる願いから生まれたと云われている。そんな雨上がりのしっとりと水気を含んだ空の色、「青さ」とどんな青なのだろうか。
 今回やって来た4点の水仙盆の中でも「青磁無紋水仙盆」は無紋、つまり青磁にある貫入(焼き上がる瞬間に無数に入るヒビ割れ)が無い青磁なのである。恐らく幾人もの陶工が「これでもか、これでもか、」と焼き続けた結果出来た青磁なのだろう。(私はどちらかといえばこののっぺりとした青磁より、貫入の入った深みのある青磁の方が好きだが。)3月26日までの展示なのでもう一度見に行き、その「青さ」を満喫したいと思っている。

  下の写真の様な空々しい「青さ」ではないので是非一度見に
  行ってください。
  
 


2017年2月1日水曜日

難波津に咲くや書の華

 
 今日31日から天王寺の大阪市立美術館で開催された第25回国際高校生選抜書展を見に行った。最近は女子高生がはかま姿での書のパフォーマンスなどで注目を浴び出し主催する毎日新聞と毎日書道会が「書の甲子園」と大々的に宣伝し盛況になっている。
 以前、篆刻教室に通った時、篆書に触れ、そこから隷書の美しさが好きになり今も時々習字をしたりしている。
 今日も隷書を中心に見て来たが入選作だけでもかなりの作品数で駆け足で見て回っても1時間を超えた。
 文科省大臣賞の作品など確かに上手いと感じたが私が感心した作品は他にあった。
 中でも前衛書道ではないかもしれないが書というより画に近いものが割と多く入選していた。
 またもう一つ感心させられたのが高校生の名前だった。書を書くために親が付けたかのような名前が目に付いた。まだ高校生なのだから書家名ではないと思うが写真の「万葉」(どう読むのかはわからないが)さんなど流麗なかな文字を書くにふさわしい名前ではないか。

  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 高校生の躍動する書を堪能し美術館を出て久しぶりに一心寺から安居の天神さん、そして新清水寺にお参りしてきた。新清水寺は京都の清水寺とよく似た景観というか真似たように「舞台」があり、音羽の滝に似せた「玉出の滝」があり今日も水ごりをする人がいた。
 上町台地の谷町筋の高台から松屋町筋に一気に下る傾斜地を利用して段々畑のように墓地をつくってある。そんな墓地の中にある新清水寺の「舞台」から西方を拝んだが通天閣が見えるだけで急に陽が陰った曇天の下に大阪湾は見えなかった。