2019年5月21日火曜日

町の経済学者


BS放送の番組に「地球タクシー」というのがある。「世界の街を訪れ、タクシーに乗車、その出会いから始まる、新しい感覚の紀行・情報ドキュメントである」という企画で時々見ているがこの前の放送では「大阪」を取り上げるというので録画しておいてゆっくりと見てみた。

東京から来たディレクターが何台かのタクシーに乗り大阪の街を走るのだが、その中で一人のタクシードライバーの話が面白かった、面白いだけでなく感銘を受けた。

66歳のそのドライバーはちょっと強面のおっちゃんだったが阿倍野から西成のドヤ街辺りを案内し「西成あいりんセンター」の前で車を止めこんな話をした。「わしらの感覚としたらここらの人間が儲かれへんかったら世の中良くならへんと思うねん。(ここらの人間が)日当1万円とかもろたら、その日のうちに金使いよる訳や。例えばおでん屋でおでん食うて酒飲んでバクチして。
そんなお金はどうなっているかというとおでん屋さんで金使う、そのおでん屋はおでんの材料を買うために豆腐屋さんで金使う、そしたらお金が廻る訳や、その日のうちにくるくるサイクルする訳や。ということはそのお金は1万円でも何人もの人の手に渡っていって廻る訳や。
ところが内部留保たら言うて何兆円も貯めた金なんか世の中に廻らへん、なんぼ大きな会社の経営者らが貯めた金なんて世の中に廻らへん。やっぱりここら辺のオッサンが裕福というほどやないけど、お金をもらえるような世の中や無かったら本当の底上げは出来へんで。人を救うような世の中にならんと、わしはそう思う。」

 昨日、内閣府が1月~3月期のGDP速報値を発表した。1~3月期のGDP速報値は物価変動の影響を除く実質で前期比0・5%増、仮にこのペースが1年続いた場合の年率換算は2・1%増となり、2四半期連続のプラス成長だったという内容だった。
 これを受けて菅義偉官房長官は「雇用・所得環境の改善、高水準にある企業収益など内需を支えるファンダメンタルズ(基礎的条件)はこれまで同様しっかりしている」との認識を示し、10月に予定する消費税増税への影響は「全くない」と強調した。

  しかしこの数字にはカラクリがあるというのがもっぱらの評判だ。共産党の小池書記局長はGDPがプラスになった最大の原因は「輸入が輸出の下落を上回る規模で大幅に落ち込んだため(輸入も輸出もマイナスなのだが)であり、内需は冷え込み、輸入も落ち込んだことで、計算上、GDPがプラスになっただけだ」と批判した。なんのことは無い、アベノミクスの失敗を何としても認めたくない安倍首相に忖度した数字のマジックだった。

景気の回復なんてどこの話、というのが我々国民の実感だがその意味で大阪のタクシードライバーの話はどんな政治家や経済学者の忖度しまくりの話より我々の胸にストンと落ちる。見事な町の経済学者の話だった。

2 件のコメント:

  1.  「いいね!」。そんな風にわれわれも語る必要がありますね。何も難しい話でなくて良いわけで。というか、素直な言葉が人の心に届くのでしょう。

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  2. 偶然見ました。こんな風に話せるようなりたいと感心しました。消費税が導入されるとおでん屋もやっていけなくなると思います。

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