2014年12月24日水曜日

民博はすごい!

 大阪万博内の民博(国立民族学博物館)で「石見大元神楽」の1日限りの公演があったので観に行った。
 神楽の盛んな島根県の邑智郡から那賀郡にかけての山間部に残されているのが「石見大元神楽」と呼ばれるそうだ。公演するのは「市山神友会(いちやまじんゆうかい)」という神楽団で、昭和54年に国の重要無形文化財に指定されている。
 一般的に知られる「石見神楽」の原型といわれるものでリアルな大蛇や花火を使い、テンポの速い八調子で舞う最近の石見神楽に比べ、いくぶんスローテンポの六調子で舞われる。私は八調子にしろ六調子にしろこの神楽のリズムが好きなのである。何か、古代から日本人の体に刻み込まれたリズムであるように感じる。大太鼓、小太鼓、手拍子(小さなシンバル)そして笛により演奏され、聞く者を陶酔させる。
 当日は、4っの演目が上演されたが二つ目の「御座」と呼ばれる演目は、舞手の演者が両手に持った「ござ」を前後に振り、これを跳びあがって何十回も飛び越えるのである。とんだ回数により、作柄の吉凶を占うという意味もあり、当日は舞手が連続して28回も跳んだ。
 続く演目「鍾馗」は素戔嗚尊(スサノオノミコト)が唐に渡って鍾馗大神と名乗り、皇帝を悩ます悪鬼を倒すがその怨念、眷属(けんぞく)が日本に攻め込み人々を悩ますため、素戔嗚が宝剣と茅の輪をもってこれを退治するという内容だ。
 この悪鬼は、伝染病や赤痢などの病気とされ、これを法力で平癒させるための道具が「茅の輪」で、今も神社で「茅の輪くぐり」という形で伝えられている。
 最後の演目が「五龍王」というもので、舞ではなく、口上が主体の演目で5人の王子が争う中へ、これを鎮めるために「文撰博士」が兄弟仲良く国を治めるよう説得する話で、この説得するための口上が大変長く、ドラマでいうところの長台詞でこれが見どころ、聞きどころとなり、実力を備えた演者が此れに当たる。
 その国の治め方(領土分配)に曰く、1年=360日の内、東西南北を領する4人の王子にそれぞれ72日を与え、中央の王子(黄龍王)には、四季の土用(五行に由来する、一年の四立-立春、立夏、立秋、立冬の直前の18日間)を合わせた72日を与える、これにより世界が四等分(90日づつ)から五等分(72日づつ)になり、世界が上手く治まることが出来たという話である。
 興味深いのは、4人の王子、青龍王(東・春)、赤龍王(南・夏)、白龍王(西・秋)、黒龍王(北・冬)、そして争いの元となる5人目の王子、黄龍王(中央・土用)と陰陽五行説に当てはめられていることである。他にも、王の12人の子供を十二支の神に任じたりと昔の暦にまつわる様々な例えが出てきて興味深かった。
 最後は出演者一同に盛んな拍手と「御座」で28回も跳んだ演者にご祝儀が出て楽しい笑いに包まれて幕となった。


 尚、この企画は「総合研究大学院大学文化研究科」の学術交流フォーラム関連事業の一環として公演されたものである。

5 件のコメント:

  1.  その昔、岡山の山間部出身の大先輩が、酒席で夜神楽の素晴らしさを語っておられたが、当時の私にはふ~んという感じでした。
     先日、奈良の大古事記展では各地の神楽のビデオが流されていました。
     今はその土地でも神楽会館のようなところで演じられることが多いようですが、元々は神社でされていたのでしょうか。
     楽しいレポートをありがとうございます。

    返信削除
  2.  昨年から地元の神社の役員をおおせつけられて、やらしてもらっています。私の担当は、神社の境内で舞う「浦安の舞」(お旅所と呼ばれている神社の外でも舞う)と神社や地域の邪気を払う「棒練・薙刀」の踊りの責任者をしています。薙刀(保育園児)棒練(小学生)は私も踊った記憶はありますが、50年以上も昔のことで細かい踊りのことは、全く忘れています。踊りの指導は、若衆に頼んでいます。浦安の舞は小学5年生と決まっています。舞の指導は以前舞った子供達が引き継いでいます。
     私の主な仕事は、小学校、保育園、市役所、公民館との打ち合わせ、地域の家々の協力金の管理(ほとんどの家が協力してくれます。)など祭り本番の1~3ヶ月は、晩酌が夜の10時過ぎになることも普通です。
     今年も11月に、地域の大きな神社2か所で祭りが行われました。責任者として非常に緊張しましたが、何とか舞や踊りを奉納出来てほっとしました。知り合いの人が「今年の舞は特に素晴らしかった。」と声をかけてもらって、何とも言いようのない嬉しさが湧きました。
     何百年続いている郷土の伝統行事かは知りませんが、これからも微力ながら継承していこうと思っています。

    返信削除
  3.  バラやんのコメントは素晴らしい。
     政治の革新を願う人々がこういう文化や伝統を大事にすることは全く矛盾しないどころか、非常に大事なことだと思います。もう一度言いますが、素晴らしい。

    返信削除
  4. 地域との横の繋がりが薄れていく中、バラやんの活躍に敬意を表します。

    返信削除
  5.  今年も残りわずかとなりました。
     1年間多様なジャンルの豊富な内容の記事を読ませていただきました。ありがとうございました。
     来年もお互いに気張って書いてまいりましょう。
     どうかよいお正月をお迎えください。

    返信削除