先月のことになるが「文楽 4月公演」を観た。今回は義姉から貰った券ではなく自前で観に行った。お目当ては、近松の心中物の最高傑作と言われる「心中天の網島」である。自分で座席を選択できるので前から五列目、右端に座った。ということは、国立文楽劇場の場内配置で言うと、舞台に向かって右側には太夫と三味線が座るから、相撲で言えば、砂かぶり、太夫の唾が飛んでくる距離である。勿論、プロの太夫が唾を客に飛ばすことはないが、熱演の太夫の額の汗が間近に見え、太棹の弦の振動が見えようかという距離である。さすがに迫力があるのだが、太夫や三味線方と目が合うような気がして、少し恥ずかしい気になった。
演目の「心中天の網島」-天満の紙屋の主人、治兵衛は、二人の子供と女房がありながら曽根崎新地の遊女小春に通い詰め、ついには心中をし果てるという物語だが、遊女を想いつめ仕事も手につかず、親戚からも愛想をつかされている亭主を何とか盛り立てようとあれこれ尽くす女房「おさん」が哀れである。現代の夫婦ならば、とっくに家から叩き出されているだろうな~と思って観ていた。話は結局、亭主を思い切らせるために遊女小春におさんが手紙を送り、身を引かせることに成功するのだが、そのことが結局、亭主と小春を追い詰めてしまう、という義理に絡んだ心中物である。
外題の顛末はさておき、有名なのがこの写真の紙屋治兵衛の頬かむりスタイル、以前のブログにも書いたが、関西歌舞伎の初代中村雁治郎がこの紙屋治兵衛を得意とし、川柳作家・岸本水府が「頬かむりの中に日本一の顔」と読んだ。この岸本水府という川柳作家は元は「グリコ」の宣伝部長も務め、今でいうコピーライターとして腕を振るった人である。グリコのコピーとして「グリコガアルカラ オルスバン」「ケンカハオヤメ グリコハオタベ」など何とも短く、的確な名コピーを残した。ちなみに「頬かむりの、、、」の句碑が道頓堀のうどん屋さんの前にある。
「頬かむりの中に日本一の顔」はいい句ですね。岸本水府は初期の頃の関西のテレビに「文化人枠」でちょくちょく出ていましたね。もちろん、高度成長に向かう時代の若い男子には興味などありませんでしたが。後に田辺聖子著「道頓堀の雨に別れて以来なり(川柳作家・岸本水府とその時代)」上中下(中公文庫)を読んで好きになりました。水府の時代つまり戦前戦後の日本というのは全く歴史の彼方という気もしますが、皮肉にも首相が思い出させてくれますね。
返信削除陽は昇りにんげんいくさばかりする(清水去鳥)
5列目右端が特等席という新知識。なるほど。
返信削除キャッチコピーといえば、これを絶対に軽視してはならないと思います。
返信削除芸能プロダクションに所属している橋下市長らの、マスコミと連携しての宣伝の威力は軽視できません。
それに対して、「反独裁」というようなキャッチコピーでは格が違いすぎたように思っています。
もともと、大阪の革新陣営はこの種の文化にも長けていたはずですが、昨今の発想の貧弱さは悲しいかぎりです。
下品な宣伝に下品な切り返しではダメでしょう。
感情的な宣伝に感情的でもいけません。
核心を突きながらクスッと笑えるような、そんな大人のキャッチコピーを7月までにみんなで考えませんか?
賛成です。今度どこかの感覚の鈍い組織に真面目に「キャッチコピー・コンテスト」を提案します。
返信削除キャッチコピーの問題は一例にすぎません。一言で言えばマンネリです。メーデーにしても、4,50年前と寸分違わぬプログラムを誰もおかしいと思わないのでしょうか。宣伝カーのシュプレヒコールも「どうしたら市民と共鳴しあえるかの試行錯誤がなくて良いのでしょうか。プラカードコンクールを壇上に披露しなかったことはどう反省されているのでしょうか。言い訳は聞きあきた感じがしています。エエカゲンにしなさい。
返信削除言わずもながですがメーデーの主役は参加者です、デコレーションやプラカードを一番よく見える檀上で披露し皆に見てもらう発想はまるで感じられなかったのは残念でした。
返信削除退職後初めての参加でしたそれなりに楽しい1日でした。(特に行進後の食事は格別でした。)
昨日から市長の慰安婦問題や沖縄での言動が大問題になっています。良識のある人ならだれでもおかしいと思うようなことです。おそらくは大多数の人が共有するこうした思いを形にするような街頭などでの行動を、緊急に提起することが必要です。そういうことが求められていると思います。
返信削除chinunoumiさん、mykazekさん、誰かからの指示待ち人間、指示されたことしかしない人間が職場で話題になったのはいつの頃だったでしょう。何か、そんなことを思い出します。おっしゃるとおり市民が主役。草の根民主主義を大事にしたいものです。SNSはその大切なグッズのひとつだと思います。
返信削除OSkも大阪の文化だと思います。かくいう私も2002年近鉄が解散宣言し団員たちが存続を求める運動をしなかったら毎回見て応援することはなかったと思いますが
返信削除OSKのテーマ曲「桜咲く国」の作詞者が岸本水府でした。千日前の「大劇」での「春の踊り」など宝塚と並ぶ大阪を代表する文化だったんですね。季刊「上方芸能」2012―12号で特集がありました。
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