新聞の記事はそこそこであったが、テレビの放映内容は、橋下市長の文楽攻撃の矢面に立って奮闘された住大夫さんが脳梗塞に倒れ、懸命のリハビリの末の復活公演、そして今回の引退公演に至る軌跡をドキュメントしたもので見応えがあった。そして、国立文楽劇場での引退公演で間近に見、聴く生の姿、正直言ってリハビリの結果がどの程度のものか、住大夫さんの持ち味であると云われる「艶と情」がどの程度回復されているのかは分からない、しかし分からないものの目を閉じて聴いていると、覚悟の引退公演、文楽の故郷・大阪での最期の「語り」という想いが心に伝わってくるように思えた。文楽にはまって１年余。何をわかった様な事を、と思われるかも知れないが、「知らん者の強み、怖さ」というものはある、それは、公演に満足し、家に帰って録画したＮＨＫの番組を見て「あーそういう気持ちで語ったはったんやなー」と納得した事があった。
住大夫さんは番組の中で「やっぱり情でんな、情を伝えるのが大夫の使命であって、きりがありまへん。僕も死んでからもまだ稽古に行かなあきまへんやろな」と仰り、引退会見の場でも「浄瑠璃ってええもんでっせ、文楽てよう出来てまっせ、こんな結構なもの、やらせてもらうのは、ほんまにありがたく、商売冥利に尽きまんな」としみじみ語っておられた。８９歳、稽古に打ち込み、引退して尚、さらに高みを目指す心意気、ほんまにすごいお人である。
最後に、私も初めての経験だったが、昨日の公演で住大夫さんが出てくると、「待ってました！たっぷり！」との声が、見事な間の掛け声だった。
あなたの満足感のようなものが伝わってきます。
返信削除私は20歳前後の若い頃、お稽古ごとをするなら浄瑠璃をやりたいなあと思っていましたが、結局、芸事とは程遠い無粋な一生だったような気がします。
これからでも遅くないかもしれませんが、絶対に脳の血管がブチ切れるような怖さを感じます。
さて、住大夫さんの脳梗塞ですが、橋下徹市長の文楽に対する無茶苦茶な悪口雑言と財政攻撃の矢面に立たされたときの心理的なストレスは極限状態であったと思います。
その後の6億円選挙ごっこのとおり、文楽に対する財政攻撃には何の道理もなかったのですから、ほんとうに被害者だったと思います。
橋下徹氏は大阪にとって積算できないくらい害が大きかったと思います。
私も4月7日に引退公演に行ってきました。住大夫さんの語り出す顔を見ていると何故か、泣けて泣けて涙が出てきました。桜丸切腹の段の終盤「親白太夫と女房八重」の「泣くない」「アイ」「泣きゃんない」「アイ」の掛け合いと」最後の「南無阿弥陀仏」で胸に迫るトドメを刺されました。そして橋下に腹の煮えたぎる憎しみを感じました。一昨日夕食の時近所のおばさんから「ＴＶで住大夫をやってるで」と妻に電話があり慌てて点けました。厳しい稽古からの情のある語りが、見られ聞かれなくなる寂しさを思っています。
返信削除私が座った座席は2等席の最後列でしたが、その後ろに折り畳みの臨時席が作られ、２部（住大夫さんの桜丸切腹の段）を目当ての大入り満員でした。今回の「菅原伝授手習鑑」の通し狂言についてはいずれまた書きたいと思います。
返信削除日本の文楽義太夫節からアメリカのフォークソングに話が飛ぶ事をお許しください。
返信削除ひげ親父さんの1月のブログで知りましたピートシガーに魅せられてユーチューブで彼の曲を聴き続けていたところ年代は分かりませんが15分ほどの「オーストラリアでのコンサート」がありました。その中でなんと「原爆許すまじ」を見事な日本語で歌っているのを聞き仰天すると同時に彼は生半可な平和運動家の歌手で無なかったなんだと思いました。また、これは画像なしですがコンサートで「インターナショナル」をフランス語で歌って大きな拍手を受けていました。腹の座ったすごい人だったんだと感動しました。この齢になって初めてピートシガーを知ることが出来て「淡口問答」に感謝です。