2014年1月26日日曜日

親の情け

いろいろと用事が重なって、延び延びにしていた文楽初春公演を観に行ってきた。演目は第1部(午前)が 初春らしく「二人禿」で幕開き。本目は第1部が「源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)」と「傾城恋飛脚(けいせいこいびきゃく)」、2部が「近頃河原の達引(ちかごろかわらのたてびき)」と「檀浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)」である。「檀浦・・」の阿古屋(平景清の愛人で絶世の美女)の艶姿を見たかったが夕方からの予定もあったので「恋飛脚」の梅川(大坂新町槌屋の遊女)の美しさを選んだ。お馴染み、近松の名作「冥途の飛脚」の人形浄瑠璃版であるが主人公の梅川と忠兵衛の黒縮緬の衣装と相まって文楽人形最高の美しさだと思っている。
 あらかたの筋は知っておられるかもしれないが、今回の「新口村の段」は飛脚問屋の主人の身でありながら、馴染の遊女、梅川の身請けの為に公金を使い込んでしまい、実父の在所、新口村に逃れていく。親戚の家に潜んでいると外を父親の孫右衛門が通りかかり、道端で転んで足を怪我する。それを見た梅川が思わず駆け寄り嫁の身を隠し介抱するのだが、これが倅の嫁かと察した孫右衛門が、身内から罪人を出した身の不幸を嘆きつつ、しかし罪人なれど一目会いたい心の内を明かす。
 『どうぞ親の目にかからぬところで縄掛かってくれ、よ。エゝ現在血を
分けた子に早う死ねと教へるも、浮世の義理か是非もなや。なぜ前方に内証でかうヘした傾城にかうした訳で金が要ると、便宜でもしをつたら久離切っても親ぢゃもの。隠居の田地を売り立てても首縄は掛けまいに。・・・エゝ憎いやつぢゃと思えども、可愛うござる』と泣き沈み分けたる、血筋ぞ哀れなる。(床本より)」と豊竹嶋大夫が切々と語る。まさに浪花の情感溢れる名場面だ。
 当日は千穐楽の前日の土曜日とあって、ほぼ満席であったが、あと1日の満席の観客数を入れても大阪市の補助金満額支給は難しそうだ。親子の情につまされ、浪花の伝統芸能に酔った後に、お金の心配をするのは何とも「ざん無い」話ではないか。市長さん、あんさんには、孫右衛門さんほどの情けもないのか。

4 件のコメント:

  1.  この記事、すばらしい結論ですね。
     たしか勘三郎さんが台詞回しに悩んだときは、「本家」というような意味の言葉で「浄瑠璃ではどうなっていたか」と調べるのだとおっしゃっていました。

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  2.  今朝の朝日新聞が「文楽補助金730万円減」と報じています。
     橋下氏の後援会幹部の息子には大阪市長秘書として年間600万円支給したり、府市統合の特別顧問や参与には年間(24.4~25.6)約2000万円支給(毎日新聞)というのにです。
     さらには、文楽はいらないが、カジノは誘致するというのですから、〽あまりのことに名もなき民も、ほんに堪忍袋の緒が切れたわいなあ~~。べんべん。

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  3.  そうですか、文楽への補助金は減額になりましたか。こちらの朝日新聞にはその記事がありませんでしたので、長谷やんのコメントを見て驚きました。
     それにしても今日もテレビのインタビューで橋下氏がNHKの新会長のフライイング発言をぬけぬけと「当然の発言だ」と擁護していましたね。
     「やるべきことはやらず、やるべきでないことは臆面もなくやる」こんな市民無視の為政者の黄昏も近いと思います。

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  4. 文化芸術はは入場者数で評価し子供人は点数で評価するこれが橋下流!まさにエコノミックアニマル以外何物でもないと思います。

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