2012年9月30日日曜日

続・寅さん、南座に現れる

今日の「赤旗」の書評欄に「山田洋次と寅さんの世界」【吉村英夫著】の書評を櫻田忠衛さんが書いておられる。「私は山田洋次のファンではあるが、山田洋次の作品のすべてを肯定している訳ではない。そのスタンスで本書を読んだが、、、」として、映画「男はつらいよ」で山田監督が描こうとした世界を『家族と柴又や寅が旅する地域のコミュニティーであった』こと、『今世紀になって無縁社会がいわれ、経済的弱者が社会から切り捨てられているとき、山田(監督)が提示してきた寅さんの世界は重い』と評されている。私は、この筆者【吉村英夫】が1981年に書いた「男はつらいよの世界」を映画好きの友に勧められて読んだが、冒頭に、「一部の者が富と権力を独占しつつ多くの民衆は真に生きる喜びを享受でき
ない生活に追いやられていったのが1970年代の日本である。・・・勤労民衆を中心に地底から想像と建設の響きがほうはいとして起こってくるのもまた1970年代であった。矛盾が露呈し人々の怒号が爆発し整然と組織化されるのを恐れる者たちが、人間の心を貧しくする煮ても焼いても食えない低俗な括弧つき文化を流し込みかきたてることで、矛盾をいわば民衆内部にすり替えることに必死になっているときに、山田洋次はフ-テンの寅を創造して、人がふれあい信じあいつながりあえる事のおおらかなメッセージを勤労民衆に送り込んできた」と情熱的に書いている。

櫻田さんは、今回、著者【吉村英夫】氏が、山田監督が小津安二郎監督の「東京物語」へのオマージュとして撮った最新作「東京家族」をもって「山田洋次」論の完成が成されるのではないか、と期待しておられる。私も四半世紀を超えて「フ-テンの寅・山田洋次」の世界の解明を期待したい。ところで、前回のブログで、フィルム映画にこだわり続ける山田洋次監督の姿勢に共鳴し、フィルム映画上映館の復活を願う、とブログしたが、ここでお詫びしたいと思う。先日、大阪の書店でDVD「小津安二郎大全集」なるものを買ってしまった。「東京物語」はじめ全9作品が収めてある。店員さんに何度も確認したが、間違いなくオリジナル、9作品が入っているとの事、その値段が、なんと驚くなかれ、1,980円  なのである。盤には Made in Taiwan  とあった。山田監督、寅さん、すみません。

5 件のコメント:

  1. ! Made in Taiwan おそるべし。
     さて、私はこのブログのず~~っと以前に「初期の寅さんはあまり好きでない」とコメントしましたが、総じて人生を肯定する山田作品は好きです。
     近頃の映画やテレビの主流は暴力と強姦と復讐ばかりが人生の主要な側面のように訴えていますが、ほんとうにこんなことでいいのでしょうか。

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  2. 最近、笠智衆にならって、「ああ」とか「ええ」とか「やあ」とか「それでええよ~」とか連発しています。心穏やかに生きようと心がけております。

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  3. !寅さんなら言うのではありませんか「青年諸君、君らは心ざわざわと生きるものなんだ」と。

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  4. 笠智衆を中心とする家族、その家族同士の会話は、言葉のラリー、軽快で、小気味よい、まるで、上質の室内楽を聞いているようです。それに比べ、昨今のTVドラマや、バラェティー番組での会話、というより怒鳴り合いの様な姿は醜い、としか言いようがありません。なんで、犯罪者や、暴力団のセリフは、作り物の大阪弁なんだ!と、怒っています。

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  5. 中身は厳しいけれども、言い方は相手にも気を使って柔らかく言うこともできるのが、都会の言葉である大阪弁の力だと思うんですけどねえ。

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