2019年12月6日金曜日

ひとつ星を見失うな


突然の悲報が心を乱している。アフガニスタンで活動中の中村哲医師が何者かに襲われ命を落とした。襲ったグループがテロ組織なのか、まだ判ってはいない。

私が中村医師を世界一尊敬に値する人物だと思ったのはその人道支援のあり方であった。
彼はツルハシ一本から井戸を掘り、ついには広大な水路をつくる事まで成し遂げた。そして水路を造るにあたり、現地の人々に継続と持続可能な工法を教えたという。
日本の古来からの水利工法、水に流されない土手をつくるための蛇籠(日本では竹を編んで石を詰める)を取り入れたりしたのも現地の人々の手に入る資材と人力で水路を維持管理できるようにとの思いからであった。
巨大な資本と機械で短期間に水路を造るなど(人道支援という名のもとに)は今の技術力ならば容易いかもしれないが、それでは機械ひとつ故障してもそれを直す技術者がいない、道具もない、ということで宝の持ち腐れになってしまう。そうした思いから今もこうした人道支援を続けてきたのだろう。

彼は1946年生まれ、私と同い年である。そんな彼を失ったことは絶望に近い、多くの人がそう思うだろう。今日も新聞には彼を知る多くの人々から悼む声が寄せられている。
毎日新聞には哲学者の故・鶴見俊輔氏が生前彼を「日本の希望は中村哲だけだ」と評したということが載っていた。
鶴見氏はかって日本共産党を「北極星のようだ」と讃えたことがある。結党以来、主権在民と侵略戦争反対の旗をかかげ、文字通り命をかけてたたかってきた日本共産党の一貫した態度を、動かぬ座標-「北極星」(異名をひとつ星ともいう)と見たのである。そうしたぶれない姿勢と彼のブレない支援の姿勢を重ね合わせたのかもしれない。

彼はまた、集団自衛権の行使容認を巡り、安倍首相が海外のNGOのための自衛隊の任務拡大に言及した際、「自らの主張を通すためにNGOを道具にしている、外交努力で不必要な敵を作らないことこそ内閣の責任だ」と批判している。
 
 私のように世界一尊敬する人を失い、絶望する人がいるかもしれないがジャーナリストの西谷文和氏の「これでアフガンから支援団体が去れば、貧困が増えて紛争がさらに増える。後に続く人が中村さんの遺志を継ぎ、恐れず活動することが重要だ」という言葉を信じよう。
 私にだって何か出来ることがあるはずだ。

    「ひとつ星」を見失わないように。

1 件のコメント:

  1.  中村哲医師がおっしゃっていたことですが、日本の憲法9条が一番の安全保障だということを思い出しています。
     今回の暴挙がどんなグループによるものかは判りませんが、安倍首相のトランプべったりの政治姿勢、安倍自身のイスラエルでの記者発表、そして屁理屈を付けながらの自衛隊の海外派遣の報道等が、ほんとうの一番の安全保障・9条を色あせつつある結果ではないかと推測します。
     テロを非難すると同時に、アメリカ等大国の軍事行動や政治介入に反対する言葉と行動を日本政府が出さないと、さらなる被害者(自衛官を含む)が出る可能性があります。
     それを許さないためにも、安倍右翼政権を退陣させる運動を広げ、そういう多数の日本国民の声が世界にも広がるようにしたいものです。

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