どう表現したらこの青の美しさを伝えられるだろうかと思い悩んでいるのだが、
そもそも青磁の器だから「青」という言葉で表現することさえ躊躇している。
今回東洋陶磁美術館で公開されている台北・故宮博物院の至宝と云われる「青磁無紋水仙盆」の美しさの事である。
故宮博物院といえば、清の第6代皇帝、乾隆帝を中心に歴代皇帝が収集した膨大な文物を収蔵した中国文化の殿堂と云われている。
特に有名なのが翡翠を彫刻した「翠玉白菜」と瑪瑙を彫刻した「肉形石」(豚の角煮)だ。2014年には東京国立博物館で催され大勢の観客が詰めかけた。この青磁水仙盆を生み出したのは中国・河南省の清凉寺跡で窯跡が見つかった「汝窯」の青磁である。汝窯と青磁を語るには膨大なページが必要らしいので今回は置いておく。
このたびの故宮博物院の至宝《青磁水仙盆》の海外初公開、しかも大阪の東洋陶磁美術館にやって来た事については東洋陶磁美術館の長年の研究と故宮博物院との交流のお蔭でもある。また、東洋陶磁美術館には、今回やって来た「青磁水仙盆」達の兄弟ともいえる「青磁水仙盆」がある事も無関係ではないと思える。現存する北宋時代の青磁水仙盆5点(故宮4点東洋1点)と清時代に作られた「倣汝窯水仙盆」1点の6点が一堂に公開されたのである。
さて話は最初の「青磁水仙盆」の青磁の「青さ」についてである。東洋陶磁美術館は陶磁器の本来の色合いを観賞することが出来るように、展示ケースの天井を自然採光するようにした展示室もあるが今回は故宮の至宝でもあり、かなり気を遣ってそこでの展示ではなかったようだ。
館内で上映されているビデオではこの青磁の「青さ」は「雨過晴天」と称し、「雨の過ぎ去った後、雲間から見える青空、そのような器を手にしたい」との時の皇帝の切なる願いから生まれたと云われている。そんな雨上がりのしっとりと水気を含んだ空の色、「青さ」とどんな青なのだろうか。今回やって来た4点の水仙盆の中でも「青磁無紋水仙盆」は無紋、つまり青磁にある貫入(焼き上がる瞬間に無数に入るヒビ割れ)が無い青磁なのである。恐らく幾人もの陶工が「これでもか、これでもか、」と焼き続けた結果出来た青磁なのだろう。(私はどちらかといえばこののっぺりとした青磁より、貫入の入った深みのある青磁の方が好きだが。)3月26日までの展示なのでもう一度見に行き、その「青さ」を満喫したいと思っている。
下の写真の様な空々しい「青さ」ではないので是非一度見に
行ってください。